「単語帳を3周した。なのに英文を読むと、知らない単語だらけに感じる」 「昨日覚えたはずの単語が、今日にはもう出てこない」 「何回やっても覚えられない単語がある。もう記憶力の問題としか思えない」
社会人になってから英語をやり直している人から、いちばん多く聞くのがこの悩みです。
そして多くの人が、この悩みを「自分の努力不足」か「年齢による記憶力の低下」のどちらかのせいにしてしまいます。だから対策も「もっと周回する」「もっと時間をかける」の一択になり、また同じところで詰まる。
結論から言うと、何周しても覚えられない人のほとんどは、周回数が足りないのではありません。「覚えた」の判定基準がズレているだけです。
この記事では、大人・社会人が英単語を覚えられない原因を7つに整理し、明日から変えられる具体的なやり方までまとめます。中高生の受験勉強ではなく、仕事をしながら英語をやり直している大人を前提に書いています。
※この記事は、自分にピッタリの英語コーチが選べるプラットフォーム Coach Fit が監修・お届けしています。
結論:問題は「覚えられない」ではなく「取り出せない」
先に、この記事の結論を1行で書きます。
記憶は「入れた回数」ではなく「思い出した回数」で強くなる。
単語帳を何周もするという行為は、多くの場合「入れる」作業の繰り返しです。英語と日本語訳を並べて眺め、「ああ、これ知ってる」と確認して次に進む。この作業を10周しても、記憶はあまり強くなりません。
一方、訳を隠して自力で思い出そうとする——これは「取り出す」作業です。心理学ではテスト効果(retrieval practice)と呼ばれ、同じ時間をかけるなら、読み返すよりも思い出す練習をしたほうが長期的な定着がよくなることが繰り返し確認されています。
「何周しても覚えられない」という感覚の正体は、たいてい次のどちらかです。
- 実は覚えている。ただし”見れば分かる”レベルまでで、取り出せない
- 取り出す練習を一度もしていないので、そもそも定着の入り口に立っていない
どちらにせよ、必要なのは「もう1周」ではなく「やり方を1つ変えること」です。
「覚えた」には4つの段階がある
まず、自分がどこで止まっているのかを特定します。ひとくちに「英単語を覚えた」と言っても、実際には次の4段階があります。

レベル1:見れば意味が分かる
選択肢があれば選べる、訳を見れば「ああ、そうだった」と思う状態。単語帳の「覚えた」チェックは、ほぼこのレベルで付いています。
ここが厄介なところで、レベル1は「知っている感」がとても強い。だから本人は覚えたつもりになり、次のブロックに進んでしまいます。
レベル2:見た瞬間に意味が出る
英単語を見て、1秒以内に意味が浮かぶ状態。「えーと……」と考える時間があるうちは、まだレベル2ではありません。
英文を読むときに必要なのはこのレベルです。読解中に1語ずつ思い出していると、文全体の意味を追う余裕がなくなります。TOEICのリーディングで時間が足りない人は、語彙がレベル1で止まっていることが多いです。
レベル3:日本語から英語が出てくる
「交渉する」と言われて negotiate が出てくる状態。ここから先が「使える語彙」の領域です。
レベル2までは受け身で成立しますが、レベル3は自分で取り出す必要があります。英会話で言葉が出てこない人は、語彙がここに届いていないケースがほとんどです。
レベル4:文の中で自然に使える
正しい形(他動詞か自動詞か、後ろに何が続くか)と、相性のよい語(コロケーション)と一緒に使える状態。
たとえば discuss は「〜について話し合う」と覚えていても、discuss about と書いてしまう人は多い。これはレベル3で止まっている典型です。
自分の目的に必要なのはどこまでか
全部の単語をレベル4まで持っていく必要はありません。目安はこうです。
| 目的 | 必要なレベル |
|---|---|
| 英文を読む・TOEIC L&R | レベル2まで |
| リスニング | レベル2+音が分かること |
| 英会話・ビジネスメール | よく使う語はレベル3〜4 |
そして重要なのは、「何周しても覚えられない」と感じている人の多くは、レベル1では覚えているという事実です。落ちているのはレベル2〜3。つまり、足りないのは周回数ではなく、レベル2〜3で自分をテストする機会なのです。
英単語が覚えられない7つの原因
ここからは、大人が単語を覚えられなくなる具体的な原因を見ていきます。当てはまるものが1つでもあれば、そこが改善点です。
原因1:「見て分かる」で〇にしている
いちばん多い原因です。前述のとおり、レベル1で合格にしているため、本番で取り出せない。
原因2:英語→日本語の一方向しかやっていない
単語帳は英語が左、訳が右に並んでいるので、自然と英→日ばかり練習することになります。しかし会話やライティングで必要なのは日→英です。
原因3:1周が大きすぎる
1500語の単語帳を頭から回して、1周に1ヶ月かかる。すると2周目に戻ってきたとき、1周目の単語はすでにきれいに消えています。これでは「初めて覚える」を繰り返しているのと同じです。
原因4:復習が「忘れきってから」になっている
週末にまとめて復習する、というやり方は効率が悪い。完全に忘れてから戻ると、思い出す作業ではなく学び直しになってしまいます。
原因5:単語帳の外で一度も再会していない
これは大人特有の落とし穴です。学生は授業・宿題・小テスト・長文問題と、同じ単語に何度も違う場所で出会います。しかし社会人が英語に触れるのは、その単語帳の中だけということが珍しくありません。
単語帳で3回会っただけの単語は、3回しか会っていない人の名前と同じです。覚えていないほうが自然です。
原因6:一度に覚えようとする量が多すぎる
「1日100語」のような目標を立てると、1語あたりに使える時間が減り、結局どれも中途半端になります。しかも量が多いと復習が回らず、翌日には全部薄れています。
原因7:目的に合わない単語帳を使っている
TOEIC対策なのに大学受験用の単語帳を使っている、会話をしたいのに文語的な語ばかりの本を使っている——このズレがあると、覚えた単語が日常の英語で再会せず、定着しません。

「大人は記憶力が落ちるから覚えられない」は誤解
「全く覚えられない」「どうしても覚えられない」と検索する人の多くが、心のどこかで年齢のせいだと思っています。ここははっきりさせておきたいところです。
語彙の習得に関して、大人が子どもより一方的に不利だという結論は出ていません。 むしろ、大人には子どもにない武器があります。
- 既存の知識と結びつけられる:語源、カタカナ語、仕事で使う専門用語など、フックにできる知識が圧倒的に多い
- なぜ必要かを説明できる:目的が明確なぶん、覚えるべき語を絞れる
- メタ認知が働く:「自分はこの覚え方だと落ちる」と気づいて修正できる
では、なぜ学生時代のほうが覚えられた気がするのか。答えはシンプルで、あの頃は強制的にテストされていたからです。
毎週の小テスト、授業中の指名、定期試験。これらはすべて「思い出す練習」を外から強制する仕組みでした。大人になると、この仕組みが消えます。誰もテストしてくれないので、自然と「眺めるだけ」の学習に戻ってしまう。
つまり、大人が失ったのは記憶力ではなく、テストされる環境です。ここを自分で再構築できるかどうかが分かれ目になります。
ただし、体調と環境の影響は無視できない
一方で、大人には大人の現実的な制約もあります。
- 睡眠不足:記憶の定着は睡眠中に進みます。寝不足のまま量をこなしても効率は上がりません
- 学習時間の分断:5分の細切れ時間で「これから覚えるぞ」と立ち上がるコストは意外に大きい
- ストレス・疲労:仕事のあとの疲れた頭で新規の暗記をするのは、いちばん条件が悪い
「量を増やす」前に、新規暗記を朝や通勤時間などコンディションのよい時間帯に移すだけで、体感が変わる人はかなりいます。
眺める周回をやめて、思い出す周回に変える
ここが、この記事でいちばん実行してほしい部分です。同じ「1周」でも、中身がまったく違います。

具体的な手順
- 200語を1ブロックにする
- 訳を隠して英語を見る。1秒で意味が出なければ「不正解」。悩まずすぐ答えを見る(悩んでいる時間は無駄)
- 不正解の語だけに印をつける
- ブロックが終わったら、印のついた語だけをその場でもう1回転
- その日の夜に、同じ200語を全部1回転
- 翌日、3日後、1週間後に再テスト。思い出せた語は間隔を広げ、落ちた語は短い間隔に戻す
ポイントは3つです。
- 悩まない。
思い出せないときに30秒粘っても記憶は強くなりません。すぐ答えを見て、次に会ったときに思い出せるかで勝負します。 - 記録を「やった量」から「出せた量」に変える。
「今日は200語やった」ではなく「200語中150語を自力で出せた」と記録する。前者はいくらでも自分をごまかせますが、後者はごまかせません。 - 1ブロックを短期間で何度も回す。
200語を3日で仕上げてから次に進むほうが、1500語を1ヶ月かけて1周するより確実に残ります。
忘れるのは正常。忘れる前提でスケジュールを組む
「覚えたのに忘れてしまう」と落ち込む必要はありません。忘れるのは脳が正常に働いている証拠です。使わない情報を保持し続けるほうが、脳にとっては非効率だからです。
よく引用されるエビングハウスの忘却曲線(20分後に約4割、1日後に約7割を忘れる、など)は、もともと意味を持たない音節を使った実験です。意味も文脈もある英単語にそのまま当てはめられる数字ではありません。
ただし、「復習しなければ急速に薄れる」「思い出す機会を挟むと保持期間が伸びる」という方向性そのものは、その後の研究(テスト効果・間隔効果)でも支持されています。数字を信じるのではなく、”忘れる前提で復習を設計する”という考え方だけを持ち帰れば十分です。
忙しい社会人の1日に落とし込むとこうなる

合計で25分。まとまった1時間を確保しようとして毎日挫折するより、この形のほうが続きます。
そして翌日以降は、
- 翌日:昨日の200語をテスト → 出せた語は「3日後」の箱へ、落ちた語は「明日」の箱に残す
- 3日後・1週間後・2週間後と間隔を広げていく
この間隔管理を手作業でやるのは大変なので、アプリに任せるのが現実的です。mikanやabceed、Ankiなどは、この間隔反復の仕組みを内蔵しています。


何回やっても覚えられない「特定の単語」への対処法
単語帳を回していると、必ず出てきます。他の語は入っているのに、その語だけ何回やっても落ちる。いわゆる「地雷単語」です。
ここに感情的になって時間を注ぐと、学習全体のペースが崩れます。淡々と処理しましょう。
ステップ1:3回落ちた語を隔離する
同じ語を3回落としたら、単語帳から切り出して別リストに移します。スマホのメモでも、単語カードでも構いません。5〜10語に絞るのがコツです。それ以上増やすと、また「覚えられないリスト」を眺めるだけになります。
ステップ2:なぜ落ちるのかをタイプ判定する
落ちる理由は、だいたい次の4つに分かれます。原因が違えば対処も違います。

ステップ3:それでも残るなら、いったん捨てる
冷たいようですが、これは大事な判断です。頻度の低い1語に何時間もかけるより、まだ手をつけていない30語に回したほうが、英語力全体への効果は大きい。
その語が本当に必要なら、実際の英文や会話で必ずまた出会います。そのときに覚え直せば十分です。
それでも単語学習が続かない人へ
ここまでのやり方は、読めば「なるほど」と思えるはずです。問題は、これを一人で3ヶ月続けられるかどうかです。
単語学習は、英語学習の中でも独学でいちばん挫折しやすい領域だと感じています。理由は3つあります。
- テストしてくれる人がいない:前述のとおり、大人が失ったのはこれです。自分で自分を厳しくテストするのは、想像以上に難しい
- 設計を全部自分でやらないといけない:どの単語帳を、1日何語、どの間隔で。この設計を間違えると、努力量に関係なく成果が出ません
- 成果が見えにくい:語彙が増えても、それが点数や会話にどう効いたかが分かりにくく、モチベーションが持たない
裏を返せば、この3つを外から補う仕組みがあれば、単語学習はかなり安定します。英語コーチングが単語の悩みに効くのは、まさにここです。週次で語彙テストを課してくれる人がいる、目的に合った教材を一緒に選んでくれる、進捗を数字で見せてくれる——「やり方は分かっているのに続かない」タイプの人ほど、効果を実感しやすい領域だと思います。
私たちが運営している Coach Fit も、そうした英語コーチングのひとつです。特徴は、決まったカリキュラムに人を合わせるのではなく、自分に合うコーチを自分で選べること。単語の詰め方ひとつとっても、スパルタで管理してほしい人と、自分のペースを尊重してほしい人ではフィットするコーチが違います。料金は月額33,000円(税込)〜で、数十万円のパッケージ型スクールと比べると始めやすい水準です。
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もちろん、この記事の方法を独学で実行できるなら、それがいちばんコストがかかりません。まずは「訳を隠して1秒で答える」だけでも、明日から試してみてください。
よくある質問
- 英単語は書いて覚えるべきですか?
-
スペルを正確に書けるようになりたい(メールを書く、英検のライティングがある)なら有効です。ただし、意味を考えずに手だけ動かす写経は効果が薄い。読む・聞くのが目的なら、書く時間を「思い出すテスト」に回したほうが効率的です。
- 単語帳は何周すればいいですか?
-
「何周」で管理するのはおすすめしません。周回数は、実際に取り出せるかどうかとほとんど関係がないからです。「1500語中、何語を1秒で出せるか」で管理してください。この数字が伸びていれば、周回数が3周でも10周でも問題ありません。
- 1日何語が適切ですか?
-
新規は20〜30語を目安に。それより多く進めたい場合は、復習の時間を確保できるかどうかで判断します。新規50語を入れても、翌日以降の復習が回らなければ、実質ゼロと同じです。
- アプリと紙の単語帳、どちらがいいですか?
-
間隔反復の管理はアプリのほうが圧倒的にラクです。一方、紙は全体量が把握しやすく、「あと何ページ」という見通しが立つ利点があります。アプリで回して、紙で全体を確認するという併用がバランスがよいと思います。
- 全く覚えられないのは、何かの障害の可能性がありますか?
-
英語だけが極端に苦手で、文字と音の対応そのものにつまずいている感覚があるなら、読み書きに関する特性が背景にある可能性はゼロではありません。ただし、これはネット上の記事で判断できることではありません。日常生活にも影響が出ていて気になる場合は、専門機関に相談するのが確実です。一方で、この記事で挙げた7つの原因に当てはまるだけ、というケースが大多数です。まずはやり方を変えてから判断してください。
まとめ
英単語が何周しても覚えられないときに、確認してほしいことをもう一度整理します。
- 問題は「覚えられない」ではなく「取り出せない」。レベル1(見れば分かる)で〇にしていないかを疑う
- 記憶は入れた回数ではなく思い出した回数で強くなる。眺める周回を、思い出す周回に変える
- 1周を小さくする。30語を3日で仕上げてから次へ
- 新規は1日20〜30語。新規:復習=1:3
- 忘れるのは正常。忘れる前提で復習の間隔を設計する
- 何回やっても落ちる語は隔離し、原因をタイプ判定する。それでも残るなら、いったん捨てる
- 大人が失ったのは記憶力ではなくテストされる環境。ここを自分で作れるかどうかが分かれ目
明日から変えるのは1つで構いません。訳を隠して、1秒で答える。それだけで、自分がどこで止まっていたかが見えてきます。
なんとなく続けてるけど、手応えがない。
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